
SoftBankWorld2019が開催されましたね。
今年も基調講演は孫正義さんが登場しました。僕は抽選に外れてしまったのでWEBから視聴しました。
ここ数年はAIについてばかり語られていますが例外なく今回も同様でした。
ただ、そこからはAIに対する熱量がものすごく伝わりました。
プレゼン内容のまとめをご紹介します。
目次
孫正義が語るソフトバンクがAIに注力する理由
人類の進化はこれからさらに加速する
まず孫さんが語ったのは、これからの進化のスピードについてです。
人類は「こうなのでは?」という推論をしながら進化をしてきました。それはもちろん人が認識できる範囲でのデータに留まっていましたが、インターネット・AI時代ではこのデータ量が桁違いになります。
インターネットは誕生から現代までにトラフィック量が100万倍になったといわれていますが、孫さんはさらに30年後には今の100万倍になると予測しています。
これはIoTが普及することによって今までの人とモノだけでなく、モノとモノでつながることによって爆発的にデータ量が増えるということです。
ソフトバンクはこれを見越して2016年にARMを買収しています。IoT機器のほとんどにARMチップが使われます。この先に世界で1兆個は使われると予測されています。
そして昨今「5G」が話題になっていますが、30年後には比べ物にならないレベルでデータ量・速度をあつけるインフラが普及してくのでこの流れは必然、というのは疑いなく納得できます。
AIには適した条件で予測させろ
データが爆発的に増えることによりAIの力に頼って推論する「AIシフト」の流れは止められません。現在はまだAIより人間が勝っている部分は多いですが30年後には間違いなく圧倒的にAIの推論が上回ります。
ただし、「勘違いしてほしくない」と孫さんが言うのはこうです。
AIに何でもやらせるのではなくて、適したAIに予測させるのが正解
つまり、人間が「これを予測させたい」と条件を絞って活用するということです。
例としてこれらが紹介されていました。
中古車販売をしているGuaziでは、いつ・どの場所で・どのような車種が売れるのかをより正確に予測することによって、在庫を抱える日数が平均で60日→15日に減らすことができた。

例えばメディアを通してのコマーシャルをどの年代に・どのくらいの経済力で・何に興味を持っているかをより正確に予測することによって、適切なレコメンドをすることができる。

ソフトバンクがやっていること
AIがこれからの世界をより大きく変えると本気で考えているので、徹底的にAIに投資をしているわけです。
驚きですが、世界ではベンチャーキャピタル約5000社で約9億ドルというところをソフトバンクは1社のみで10億ドル越えを投資していることで圧倒的なポジションを確立しています。
次の3点によってソフトバンクはAI革命をけん引していると孫さんは言います。
- AIに特化
- ユニコーン投資
- シナジー創出
圧倒的な数のAIユニコーンに投資することでシナジーを生んでいるのは世界でソフトバンクだけと言えるでしょう。
実際にUBER・DiDi、Grab、OYO、WeWorkなど(すごいメンツ!)82社に投資をしているわけです。
その中から4社のCEOによるプレゼンがありましたので次項でまとめます。
ソフトバンクが投資する世界のAI企業
OYO(オヨ)

AI×ホテルで数年でホテル業界2位(おそらくすぐにトップに!)まで上り詰めているCEOリテッシ氏はなんとまだ25歳・・。おそろしいです。
プレゼン内容のキモのみをまとめます。
- 全世界の1.6億室そのうち90%はOYOになる可能性がある
- すでにヨーロッパ、アジア、アメリカ80か国において110万室がすでにOYO
- 6年で世界2位のホテルブランドへ
- AI活用で契約締結にかかる時間、8日→2.8日に!
- AI(デザインアルゴリズム)活用で、適切な家具で稼働率が2倍に
- 客室清掃管理アプリにより生産性が2.5倍に向上
- 機械学習で適切な価格調整を
有効活用できていないホテルをAIによって徹底的に低コスト化をしてビジネスにしてしまうというビジネスモデルです。
中流層といわれる世界35億人のすべての人によりよい暮らしをしてほしいという壮大な夢を語るリテッシ氏に孫さんが力を貸したくなるのはよくわかります。
Grab(グラブ)

UBERの競合企業というイメージがありますが、東南アジアではUBERに勝利している形となっています。そして、ライドシェア以外にもフードデリバリーとペイメントの分野でも大きく成功を収めています。
プレゼン内容のキモのみをまとめます。
- 1つのアプリで生活をカバー(スーパーアプリと呼ばれる)
- 圧倒的にデータを集めていることが有利に働いている
- リアルタイムにダイナミックプライスに
- リアルタイムに最低なレコメンドを
- Grabが実現したこと→渋滞の克服・食品廃棄物の削減・貧困層の金融取引
ガンの子供への募金を募るために頭を丸めたアンソニー氏によるプレゼンでは、Grabの世界観がよくわかりました。
東南アジアでは既に生活に欠かせないサービスとなっているそうで、日本でもライドシェアを中心としたサービスを早く展開していきたいものです。(日本の規制クソすぎます。。)
Paytm(ペイティーエム)

インドのペイメントを圧巻しているPaytmはご存知でしたか?みなさんが使われているPayPayはこのPaytmの知見によって作られています。
プレゼン内容のキモのみをまとめます。
- インドのペイメントを4年で変革・ユーザーが2000%増加
- Paytmが蓄積した膨大なデータを活用したローン審査:クレジットカードは不要!
- データを活用した低コスト保険:必要な時だけ保険を切り替えるなどできる
- AIによってたった数年でローン・保険企業でトップになっている
電子決済をすると、それに基づく信用スコアが容易に活用できます。実はこれってかなりの可能性を秘めていて、Paytmのように決済ごとの信用取引や流動的な保険などの柔軟なサービスを実現させることができます。
ローンや保険という分野は、日本では長きにわたりイノベーションが起きてません。このプレゼンを見て、ビジネス的にも大きな変化が日本でも起こることが想像できました。
plenty(プレンティ)

AI×農業で農作物をより最適に栽培することにより、より美味しく安全な食べ物を低コストで提供してくれるそうです。(恥ずかしながら初めて知りました)
プレゼン内容のキモのみをまとめます。
- 夢中になる味+入手可能=人間の健康
- より多く摂取してもらうためのカギは「味」
- 提供する5つの価値「95%以上の節水性」「無農薬」「最大350倍の収穫性」「高い栄養価」「最高の味覚」
- AIによる生産方法の最適化で実現(160万のデータポイントを各プラントに設置)
- AIの活用で30のパラメータを最適化→効果として64億の栽培方法
- 環境問題なので供給が減った場合、plentyは栽培方法を調整して対応可能
衣食住でもっとも人間が必要としている食に関しても当然AIを活用できます。繰り返し発言していたのが「美味しいことが最も大事」というのは僕も同意です。
人類は飢餓問題を解決したのちは、安定して「低コスト・健康・おいしい」食品を確保するフェーズに来た、という感想を持ちました。
孫正義はまだ日本企業に期待をしている
最後に孫さんの主張をまとめます。
「会場の皆さんの中で、AIエンジニアが1000人以上いる企業はありますか?」
あれだけの人がいながら1つも手が挙がらないのは、もちろん孫さんはわかっていて質問しています。孫さんが日本企業に投資しない理由はここにある、と明確に答えていました。
続いて、痛烈な言葉が孫さんから飛び出します。
「日本はいまやAI後進国になった。日本にいるAI評論家は時代遅れ甚だしい。」
非常に厳しいお言葉ですが、これをあえて言うのは孫さんが日本が好きだからと説明しています。日本がAIに目覚めてくれるのを期待しているのです。
「インターネット黎明期にFacebookもNetflixもまだ存在してませんでした。AIでも日本企業はまだ間に合います!」
本当は孫さんだって日本企業に投資をしたいはずです。本気でAIで世界に勝つ気であれば絶対に手を貸してくれるはずです。うれしい言葉ですね。
最後に、孫さんの捨て台詞をどうぞ。
「人々の幸せのために・・AI革命があります」
