
IBMはブロックチェーンベースの食品追跡ネットワーク「フード・トラスト」を正式に開始したと発表しました。
こちらがIBM公式リリースページとなります。
どんなシステムなのか
概要
ブロックチェーンは改ざんされにくいという特性からトレーサビリティ(追跡性)に優れていると言われていて、かなり前から期待されている分野です。去年に日本国内にてプライベートブロックチェーン技術であるmijinを採用して、ジビエ食肉のトレーサビリティの実証実験をしたことが話題になりました。
※参考記事
IBMも昨年から「グローバルな食品サプライチェーンの大手企業と一緒に取り組む」と発表していたことから注目されていました。IBMは今回の発表までに18ヶ月間のテスト期間を設け、小売業者とサプライヤーは同ブロックチェーンを使用して、「何百万もの個々の食品」を追跡したと発表しています。
メリット
このシステムを使うとこれらのメリットがあると考えられています。
- 食品の原産地や生産者の可視化
- サプライチェーンなどの流通履歴の可視化
- 汚染された食品の調査の迅速化
- 腐敗によるコスト損失の減少
確実な追跡情報が記録できるので、まず消費者である僕たちにとっては「とても安心できる」と言えます。
もちろんこれもメリットなのですが、最も効果が高いと考えられるのが流通履歴が確実にわかるので、もし汚染された食品が発生した場合にその流通履歴に該当する食品をすぐに把握できることになります。これは人的健康被害に繋がりますので効果的です。
また、場所だけでなく「いつ」という情報も確実になるので、腐敗によるコスト損失もコントロールしやすくなります。これは小売り側からするとビジネス損失に直接関わる情報なのでこれも効果的となります。
そして、ブロックチェーンの大きな特徴としてこれらのメリットの傍受を低コスト管理が可能としていることがあります。なので一般的に単価の低い食品分野でも導入しやすいので相性が良いと見られています。
これからの展望
どこに使われるのか
フランスを本拠におく、33カ国で1万2000店舗以上を運営する「主要食品小売業者カルフール」の各店舗にてまずは導入してテストが行われるそうです。IBMによると、2022年までにカルフールは世界各地の店舗でブロックチェーンを展開する予定としています。
また、米流通大手ウォルマートでもIBMと協業して食品流通管理にブロックチェーンを活用する取り組みをしています。小売り最大規模(EC主流のAmazonは除く)のウォルマートで上手く運用にのったら大きな影響力になると思われます。
※参考記事
課題はなにか
トレーサビリティでの課題はなんといっても「紐づけ問題」です。
どんなに正確にトレーサビリティを記録できても、その商品が本当にこの記録通りなのか?つまり、商品の同一性を確認できなければ意味がありません。
実はIBMはこの問題にも積極的に取り組んでいて、今年3月にこの問題を解決する可能性を示す「世界最小」コンピュータを発表しています。
※参考記事
これを「クリプトアンカー(crypto-anchors)」と呼んでいますが、このような特徴があります。
- サイズが塩粒ほどの大きさで1平方mm!
- 製造コストは10セント(約11円)!
- 太陽電池で駆動できるのでバッテリー不要!
- LEDの発光によってネットワークと通信可能!
これホントにすごいです。流石はIBM。テスト期間でこれが使われるかどうかはわかりませんが、最終的にはこれ(もしくは後継機)が使われる可能性が高いでしょう。
ブロックチェーン活用でまずは実運用にのせたいサービスなだけに期待しています。IBM+ウォルマートで成功すれば世界中の小売りのスタンダードになるのではと思います。また、小売りだけでなく工場サプライチェーンや医療分野でも応用できると考えられていますので世界にもたらす影響は非常に大きいです!