【AI VS. 教科書が読めない子供達】 AI社会で生き残るために必要な知識を短い時間で習得する 解説まとめ

こんにちは。ITブロガーのマサタカです。
今回は僕自身AIを勉強するために本書をまとめることとしました。

みなさんはAI(人工知能)についてどのくらいわかっていますか?

僕が思うに「実は全然よくわかっていない」という方が大半だと思っています。というのも僕はエンジニアという仕事をしていますが、それにも関わらず周りの人で大まかにでも理解しているという人はそれほど多くはありません

これは自分も含めですが、AIについて興味を持ち調べていくと複雑な数学の知識が出てきます。すると「やっぱ厳しいかなぁ」とそこで辞めてしまいがちです。

しかし、巷では「AIが人間を超える日は近い」とか「すぐに私たちの仕事がAIに奪われるだろう」といった情報が溢れています。果たしてそれって本当なのか?AIについての真実を知りたいと考えているあなたにとってこの本はとても有益だと思います。

そこで今回は、まずは要点を掴みたいという方向けに僕なりにできるだけわかりやすく解説をしたいと思います。



AIは東大に合格できるか?

「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトの狙い

まず本書で大事な位置付けとなっているプロジェクトのご紹介です。

筆者である新井紀子さんが自ら立ち上げているプロジェクトで「ロボットは東大に入れるか」を2011年に開始しています。これは、「人工知能を駆使して東京大学の入試に合格をしよう」という内容で「東ロボくん」という愛称がメディアで大きく取り上げられましたので聞いたことがある方は多いと思います。

しかしここで重要なのは、新井紀子さんを含めた関係者全員、AIが東大に合格する日はやってこないと確信してやっています。この理由は後述します。それでは何のためにやっているのか?本当の狙いはこれらです。

東ロボくんの本当の狙い

  • AIにはどこまでのことができるようになるのか
  • AIがどうしてもできないことは何か
  • AIの正体を多くの人に実感してほしい
  • その上で、AIと共存するために必要なものは何かみんなで考えたい

これは本書を読み解く上で大切な共通課題意識ですのでとても重要です。

東ロボくんが使うAI技術

それでは東ロボくんが実際に扱うAI技術について知りましょう。これは今のAI技術を使うために何が必要なのかを掴むために是非理解してほしいです

機械学習

インターネットの普及により大量のデータがウェブ上に増殖したことにより可能となったAI技術で、統計的な方法論となります。

例えば、画像を見せた時に「ここにイチゴが写っているかどうか」を判断させることができます。これを実現するためには、大量のイチゴの画像を用意することが必要です。そして「ここにイチゴがあるよ」と教えるデータを作る必要もあります。これを「教師データ」と呼びます。

「教師データ」は基本的に人間が作ります。大量に作る必要があるのでとてつもない労力と資金が必要になります。そしてその作成するデータがそのままAIの精度に反映されます。しかも難易度はとても高く正解率を1%向上させるために1年がかりとなる場合もあるのです。

ポイント【メリット】

  • 質の良い教師データを用意できれば精度を高めることができる。

【デメリット】

  • 教師データは人間が作るので高コストとなってしまう。
  • 人間が作る教師データには偏りなどが生じてしまう。

ディープラーニング

近年のマシンパワーが大幅に上がったことにより可能となった技術で、教師データを水増しすることにより膨大な教師データを低コストで作成できる技術です。

仕組みとしては、教師データとなる特徴量をいくつか組み合わせて力技で最適な特徴量を設計します。なので人間の手間がかなり省ける素晴らしい技術なのですが、我々が抱く夢のようなシステムではありません

これは勘違いをしやすいのですが、勝手にAI自身が自律的に学習してくれるのではなく、十分な量の教師データを準備する必要があります。ここでもやはり人間が適切な教師データを作成できるかどうかがカギになるのです。

ポイント

【メリット】

  • 人間が教師データを全て作成するより低コストで同等かそれ以上の精度が出る可能性がある。
  • 人の思い込みなどが影響されにくいので、最適化されたデータである可能性が高い。

【デメリット】

  • 膨大なマシンパワーが必要になる。
  • 結局は人間が十分な量の教師データを準備する必要がある。

強化学習

機械学習では教師データありきですが、こちらは教師データ無しで完全に機械に任せる方法となります。方法はシンプルで目的制約条件を与えてひたすら膨大な数を繰り返すという仕組みです。

例えば自動車に「なるべく早く目的に到着する」という目標と「障害物にぶつからない」という制約条件を与えて勝手に試行錯誤させます。すると回数を重ねるたびに理想の動きをしてくれるというものです。

ただしこれも目的と制約条件の設計は人間がやらざるを得ません。しかもこれが明確でないと機能しません。「役に立つことをする」や「いい感じにする」といった内容だと当然ながらAIには判断ができないからです。

ポイント

【メリット】

  • 膨大なコストがかかる教師データを用意する必要がない。

【デメリット】

  • 繰り返し膨大な試行錯誤をさせる必要がある。
  • 目的と制約条件の設計は人間がやらざるを得ない。

東ロボくんの結果は – AIが仕事を奪う可能性

さて、近年AIを駆使した結果、東ロボくんはどこまで東大の合格に近づくことができたのでしょうか?結果から言うと「東大合格はできないが、受験者の上位20%の成績を達成」しました。

ホワイトカラー企業に就職をしたい18歳が本気で挑んだセンター試験でその約80%の子供が現時点でAIの成績に負けているのです。これは何を意味するか?巷で言われている「すぐに私たちの仕事がAIに奪われるだろう」は本当だったということです。

新井紀子さんは50%のホワイトカラーが20年(もっと短い期間もある)で減ると予測しています。そして単純な比較は不適切かつ不謹慎であることを前提としながらも「WHOが今世紀初めてグローバルアラートを宣言したSARSの死亡率10%」とは比較にならないほど大変なことがこの世界で起ころうとしていると警告しています。

AIの限界シンギュラリティはSFだった

さて、ここでは東ロボくんから見えてきたAIの限界についてまとめます。

東ロボくんが東大合格が不可能である理由

スパコンは要らない ビッグデータも幻想

AIなんだからハードウェアの性能が上がればそれだけ能力が上がると思ってしまいがちですが、それは間違いと指摘しています。今の世界トップのスパコンを使っても「地球滅亡の日まで解けない」という事実があります。1秒間の演算処理の回数と知性には科学的な関係はないようです。つまりアルゴリズムで解決できない問題はいくらハード性能を上げても意味がないということになります。

ビッグデータも誤解している人が多いとのことです。まず「ビッグデータは集まるはず」という誤解で、例えば英語のリスニング問題は1年間に10問程度です。これを20年間分集めたとしてもたったの200問です。さらに「ビッグデータが集まりさせすればできる」という誤解です。これもスパコン問題と同様、最適なモデルを見つけることができなければ全く効果がないのです。

立ちはだかる常識の壁

「冷蔵庫を開けてコーラを取ってくる」これは非常に限定された条件であればAIロボットでも可能です。しかし、隣にビールがあった場合・奥の見えないところにあった場合・はたまた冷蔵庫のドアの開け方が自宅の冷蔵庫と違った場合、ロボットにはできません。しかし人間であれば小学生の子供でも難なくできてしまいます

この差が「常識を持っている」であり、この常識をAIに教えるとなると途方もなく莫大なデータ量となってしまい、とてつもなく難しいことなのです

AIが意味を理解しないということ

コンピューターは計算機

ご存知の通り、僕たちが持っているPCやスマホは計算しかできません。何でもできると思われがちですが実際はできることは四則演算のみです。

そして計算をするための数学で表現できることは以下の3つしかありません

コンピューターができること

  1. 論理
  2. 確率
  3. 統計

iPhoneSiriに「今日の天気は?」と聞いて「この辺の天気は今日は晴れです」と答えてくれるのもあたかも意味を理解しているようなふりであり、実際は計算した結果、統計から「この答えが当たってる確率が高い」と選択したものを回答しているだけなのです。

シンギュラリティは到来しない

お分りいただけたでしょうか?

「超絶すごいコンピューターができればAIの性能は飛躍的に上がる」「ビッグデータさえ集まればAIで何でもできる」「AIが極まればドラえもんのようなロボットができる」

僕はこれらが絵に描いた餅であったことがわかりやすく理解できました。そして、その限界の原理とは数学の限界であり、ここの課題をクリアされない限りシンギュラリティは到来し得ないのです

実は子供のほとんどが教科書が読めない

AIの限界とおおよその現在地がわかりました。それでは、僕たち人間側はどうなのか。本当にAIに負けてしまうのかについてまとめます。新井紀子さんが最も伝えたいことがこの事実だと思います。

基礎的読解力調査の驚きの結果

新井紀子さんは東ロボくんプロジェクトと同時に「大学生数学基本調査」を実施しました。その結果から、これは問題文を理解できていないのではないか?という疑問を持ったそうです。そこで、中高校生の「基礎的読解力」を調査することになりました。

おおよその結果は以下です。

基礎的読解力からわかったこと
  • 中学校を卒業する段階で、約3割が内容理解を伴わない読解もできない
  • 学力中位の高校でも、5割以上が内容理解を要する読解ができない
  • 読解能力値は中学生の間は平均的に向上するが、高校では向上しない
  • 読解能力値と進学できる高校の偏差値との相関は極めて高い
  • 読解能力値と家庭の経済状況には負の相関がある

なんと、一般的な高校生の半数以上が内容理解を要する読解ができないことが判明したのです。

そして原因を追求するため調査をしましたが、以下には相関が見られなかったそうです。

これらには相関がない
  • 通塾の有無
  • 読書の好き嫌い
  • 科目の得意不得意
  • 1日のスマートフォンの利用時間
  • 学習時間

いくつになっても読解力は養える

読解できないパーセンテージがあまりに深刻であると同時に、僕らが想像する「読解力に関係しそうなこと」は全く相関性がなかったことがわかりました。それでは一体何が子供の読解力の差を生んでいるのか?

これは僕の考えとなりますが、「何をしているか」ではなく「何を考えながら生活しているか」が鍵になっていると推測しています。つまり、読解力のある人は何か物事をする際に「なぜそうなるのか?」「こうであるということはこうなるはずだ」「これを何かに利用できないか」といったような思考をしているのではないでしょうか。

深く思考するためには、物事に対して論理的に捉えられる能力が不可欠となります。これが読解力に直結しているのではないでしょうか。こう考えると「何をしているか」とは特に相関が見られないのも納得できます。

ということは、物事に対して思考する癖をつければいくつ(何歳)になっても読解力の向上は望めると考えます。新井紀子さんもいくつになっても成長できるという仮説を持たれています。

AI社会になった時の最悪のシナリオ

AIと現代の子供たちの能力について理解したところで、最後はAI社会で起こるこれから我々はどう生き残れば良いかを新井紀子さんから学びましょう。

AIに分散されるホワイトカラー

AI社会ではホワイトカラーは大きく以下の3つの仕事に別れるとしています。

AI社会のホワイトカラー

  1. AIを導入する立場の仕事
  2. 教師データの設計をする仕事(アノテーション設計やオントロジー設計)
  3. 設計された教師データを作る仕事

問題は「その割合」と「報酬の差」です。おわかりいただけると思いますが、上の2つはAIにはできないかつ誰でもできる仕事ではありませんAIについて深い知識がないと導入や設計ができませんから。

そうなると上2つの仕事は少ない人材が就くこととなります。当然、報酬は高くなります。となると残りの教師データを作るだけの仕事は多くの人で奪い合うことが予想されます。しかもこれは働く場所や人種は関係ないため人件費の高い日本人が負けてしまうのは自明の理です。報酬はもちろん限りなく少なくなるでしょう。

AI導入で淘汰される企業

人だけでなく多くの企業もなくなると言います。皆さんはショールーミング現象というのをご存知ですか?以下の一例が分かりやすいと思います。

ショールーミング現象の一例

トイザらスにに行って子供が欲しいおもちゃを探して、配送料無料&低価格のAmazonで購入する行為

これは皆さんも経験があるのではないでしょうか?このショールーミング現象とAIの組み合わせが起こす衝撃が企業を淘汰する可能性を秘めています。

それは今はまだこの記事をお読みいただいているあなたのように「スマホでGoogle検索をして、情報を比較して賢い買い物ができる」消費者だけがこのような行動をとっています。しかし、やがてAIにより誰でもこの最適化が可能になります。

こうなった時に、急速に全てのモノがどこで買っても同じ値段になる社会変化が起こります。そうすると日本を代表する企業であってもどんどんと消えていく末路が見えてきます。

生き残るための道

AIが及ぼすであろう現状のヤバさがお分かりいただけたと思います。それでは最後に、新井紀子さんが考えるAI社会で人間が生き残るための道についてです。

よく言われているベーシックインカムの導入はまだ早計というご指摘をしています。それでは一体どんな道が残されているというのでしょうか。

それは至ってシンプルで、競合者がいないブルーオーシャンの仕事をすることだと主張しています。進歩したデジタルとAIを味方につけて、人間にしかできない仕事をすればいいのです。小さくても、需要が供給を上回るビジネスを見つけることができたらAI時代を生き残ることができるのです。AIは敵ではなく心強い味方であると、考えるべきなんですね。

私たちが、人間にしかできないことを考え、実行に移していくことが、私たちが生き延びる唯一の道なのです。(本書より引用)

そのために重要なことは、まずは読解力が必要となります。少しずつでも、常に思考しながら生活することを心がけていきましょう。



まとめ

今回は「AI」をテーマにしていますが、自分自身、AIについて考えをまとめたくて本書を手に取りました。実際に本書は機械学習の基本や高度な数学に詳しくなくともわかりやすい内容となっていてとても勉強になりました。

僕の結論としては、「常に思考しながら物事に取り組め」ということでした。そう考えるとこうやってブログを書くという行為は、これからのAI時代に適した能力を培う優れた勉強法だと思いました。

こうやって文章をまとめることによって、少しでも読解力が上がることを願ってこれからも書き続けていきます。皆さんも生活の中でより思考することができる習慣を持っていますか?

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。